地下タンクに関する法令
強化された地下タンクの規制
危険物の規制に関する規則等の一部が改正され地下タンクの規制が強化されました
危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成22年総務省令第71号)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示の一部を改正する件(平成22年総務省告示第246号)が、平成22年6月28日に公布され、平成23年2月1日より施行されています。
改正の概要
製造所等の危険物施設において、液体の危険物を貯蔵し取り扱う地下に埋設された貯蔵タンク(地下貯蔵タンク)から、危険物の流出事故が増加していることを受け、流出事故防止を目的として法令が改正されました。これにより、既設の地下貯蔵タンクの設置年数、塗覆装の種類及び設計板厚から、腐食のおそれが特に高いものとされるものについて、腐食を防止するためのコーティング等の流出防止対策を講ずることとされました。
規制対象は鋼製一重殻で地盤面下に直接埋設されたタンクです
鋼製一重殻とは、貯槽が1枚の鋼板で製作されたタンクで、平成2年以前に埋設されているものは、全て鋼製一重殻タンクになります。平成3年以降に設置が認められるようになった二重殻タンク(SFタンク等)は該当しません。
直接埋設タンクとは、タンク周囲をコンクリートの壁で囲ったもの(「タンク室設置式」又は「ピット式」と言う。)又はタンクの周囲に直接コンクリートを流し込んだもの(「漏れ防止構造」又は「コンクリート被覆式」という。)以外の埋設方法を言います。 通称:「コロッケ」または「コロッケ埋設」などとも呼ばれます。
危険性の度合いに応じたタンクの区分
危険性の度合いに応じてタンクが区分されます
設置されてからの年数だけでなく、タンクの構造(タンクの設計板厚、外面保護方法)も合わせて漏洩の危険性を判断し区分されます。
年数の区分は次のとおりです
20年以上30年未満/30年以上40年未満/40年以上50年未満/50年未満
年数はタンクの埋設(設置又は変更)に係る完成検査済証の交付を受けた日からの経過年数となります。
地下タンクの主な設計板厚は次のとおりです
3.2mm/4.5mm/6.0mm/8.0mm/9.0mm/12.0mm
設計板厚とは、タンクを設置した時点での板厚をいいます。規制では厚さ3.2mm以上の鋼板で作ることとなっているため、ほとんどの地下タンクは4.5mm以上の厚さの鋼板を使用しています
外面保護方法は次のとおりです
区分 | 外面保護方法の名称 |
---|---|
a | モルタル 「モルタル防水」などとも呼ばれます。 |
b | アスファルト 「アスファルト防水」などとも呼ばれます。 |
c | エポキシ樹脂又はタールエポキシ樹脂 昭和62年以降のタンクから埋設が可能になりました。 |
d | 強化プラスチック(FRP) 平成5年以降のタンクから埋設が可能になりました。 |
以上を総合的に判断して下記の3段階に区分されます
区分 | 規制区分の名称 |
---|---|
A | 腐食のおそれが特に高い地下貯蔵タンク |
B | 腐食のおそれが高い地下貯蔵タンク |
C | その他の地下貯蔵タンク |
腐食のおそれが高い地下貯蔵タンク
A 腐食のおそれが特に高い地下貯蔵タンクの詳細
設置年数 | 外面保護方法の名称 | 設計板厚 |
50年以上 | aモルタル | 8.0mm未満 |
bアスファルト | すべての設計板厚 | |
cエポキシ樹脂又はタールエポキシ樹脂 | 6.0mm未満 | |
d強化プラスチック(FRP) | 4.5mm未満 | |
40年以上50年未満 | bアスファルト | 4.5mm未満 |
B 腐食のおそれが高い地下貯蔵タンクの詳細
設置年数 | 外面保護方法の名称 | 設計板厚 |
50年以上 |
a モルタル | 8.0mm以上 |
c エポキシ樹脂又はタールエポキシ樹脂 | 6.0mm以上 | |
d 強化プラスチック(FRP) | 4.5mm以上12.0mm未満 | |
40年以上50年未満 | aモルタル | 6.0mm未満 |
bアスファルト | 4.5mm以上 | |
cエポキシ樹脂又はタールエポキシ樹脂 | 4.5mm未満 | |
d強化プラスチック(FRP) | 4.5mm未満 | |
30年以上40年未満 | a モルタル | 4.5mm未満 |
b アスファルト | 6.0mm未満 | |
20年以上30年未満 | b アスファルト | 4.5mm未満 |
C その他の地下貯蔵タンクの詳細
A及びBに該当しないタンクは規制対象となるまでは現状のままで使用できます。
前項の表を外面保護方法により図示すると次のようになります。
危険物の流出を防止する措置の内容
区分A及び区分Bに該当した地下貯蔵タンクには、それぞれ、次に掲げる流出防止対策措置を行う必要があります。なお、区分Cのタンクは、区分A又は区分Bに該当する日が到来するまでの間は、現行のままで使用できます。
A 腐食のおそれが特に高い地下貯蔵タンクに講じる措置
(1)内面コーティング
(2)電気防食
B 腐食のおそれが高い地下貯蔵タンクに講じる措置
(1)内面コーティング
(2)電気防食
(3)危険物の漏れを検知する設備等による常時監視
措置の実施時期
平成25年2月1日の時点で、規制強化に該当するタンクは、平成25年2月1日までに措置を実施する必要があります。
改正法令規制開始日時点で腐食のおそれが特に高い地下貯蔵タンク
外面保護方法 | 板厚 | 埋設日 |
モルタル | 8.0mm未満 | 1963年(S38)2月1日以前 |
アスファルト | 4.5mm以上 | 1963年(S38)2月1日以前 |
4.5mm未満 | 1973年(S48)2月1日以前 |
改正法令規制開始日時点で腐食のおそれが高い地下貯蔵タンク
外面保護方法 | 板厚 | 埋設日 |
モルタル | 8.0mm未満 | 1963年(S38)2月1日以前 |
4.5mm以上6.0mm未満 | 1963年(S38)2月1日~1973年(S48)1月31日 | |
4.5mm未満 | 1973年(S48)2月1日~1983年(S58)1月31日 | |
アスファルト | 6.0mm以上 | 1963年(S38)2月1日~1973年(S48)1月31日 |
4.5mm以上6.0mm未満 | 1973年(S48)2月1日~1983年(S58)1月31日 | |
4.5mm未満 | 1983年(S58)2月1日~1993年(H5)1月31日 |
上記の表に該当しないタンクは、タンクを埋設した日からの規制開始経過年数を確認し、規制開始日を計算する必要があります。なお、「タンクを埋設した日」とは、タンクを埋設した設置(変更)工事に係る完成検査済証の交付日をいいます。
現在休止中の埋設タンクについて
現在休止中の鋼製一重殻直接埋設タンクの規制強化について
札幌市においては、休止されたタンクに一定の安全対策を講じた場合に限り、「休止再開の前日までに措置を行うことができる。」とする特例を設けています。
安全対策の概要(必要な措置)
・特例措置の適用を受けようとするタンク内の危険物を除去すること。
・誤って危険物が流入することのないようにするための措置を講じること。